恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで




研究室に戻ると、珍しくユリウスが自席で大人しく作業していた。

というよりかは何かに没頭していて、周りが見えていない様子のようで、イザベラが部屋に入ってきても見向きもしない。

そんなユリウスの態度に慣れきってしまったイザベラは特に気にすることなく、自分の席に座った。

さて、どうしたものか...。

イザベラの頭の中は今、ジョシュアから出された難題に大半を占領されている。

何故、ジョシュアが自分を好きになったのか。

そんなのジョシュアじゃないんだからわかるわけがない。

厄介なことになってしまったなと頭を悩ませてると、ユリウスのほうから何かが倒れる物音が聞こえてきた。

顔を上げると、ユリウスの手元に空のコップが転がっている。

たぶん手に当たり、倒してしまったのだろうが、ユリウス本人は集中しすぎて気付いていない。

コーヒーを最後に淹れたのはイザベラが研究室を出る前だったので、きっと飲み終わった後は何も口にしていないはずだ。

椅子から立ち上がり、イザベラは新しくコーヒーを用意する。

コップにコーヒーを注ぎ、猫舌のユリウスに合わせて温度を調整し、彼の机の上に音を立てぬようにそれを置いた。