恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



このまま死ぬのは嫌だなと思ったイザベラは、ユリウスとの距離を詰める。


「...先生、腕を掴んでも、よろしいですか?」


隣のユリウスを見上げると、怪訝そうに眉を寄せる。


「...何のために?」

「わかんないですけど...、最後に人の温もりを感じたいからじゃないですか?」


この状況だと、ユリウスしかいないのだから、しょうがない。

しかし、ユリウスは納得していないのか仏頂面で睨んでくる。


「…先生のせいでわたし死んじゃうんですから、最後ぐらいわがまま聞いてくれてもいいじゃないですか...」


消え入りそうな声で呟くと、さすがのユリウスも罪悪感を覚えたのか、ため息を吐くも、左腕をイザベラに差し出してきた。

恐る恐るイザベラはユリウスの腕に手を添える。

ユリウスの腕を掴んだ瞬間、僅かにその体が強張った。

拒絶されたのかと思ったが、振り払われることはなかった。

触れた瞬間、悲しみや怒り、死への恐怖などでささくれ立っていた気持ちが徐々に落ち着いていく。