恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



「先生、なんでそんな落ち着いているんですか。 なんか考えがあるんですか?」

「いや、そんなものない。わたしの魔術は完璧だ、何をやっても無駄だとわかっているのだから焦る必要がない」


イザベラは全身の力が抜け、倒れ込むようにユリウスの隣に座った。


「...先生は、死ぬのが怖くないんですか?」


あまりにもいつも通りすぎるユリウスにイザベラは素直な疑問をぶつけてみた。


「魔術の実験で命を落とすことは珍しくない。それが自身で構築した魔術なら仕方ないことだ、甘んじて受け入れよう」


魔術に対して、あまりにも誠実すぎる姿勢に感銘さえ覚える。

しかし、それは常識の範囲内で行った場合のみ許される言葉だとイザベラは思う。

何故なら今回の魔術で被害を被るのはユリウスだけではないのだから。

もう腹立たしさを超え、悲しくなってきたイザベラは、ついに涙をぽろぽろとこぼし始めてしまった。


「わたしは、何も知らされず、ただ巻き添えを食らってるだけなんですけど...」


こんなところで、ユリウスの魔術によって死ぬことになるなんて、思わなかった。

頭上の数字が5分を切ろうとしていた。