恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



さも当たり前のような顔をしているが、イザベラは何を言っているのかわからなかった。

急いでユリウスの手元にある紙を確認したが、そこには何も書かれていない。


「...まさか、魔術を発動したら陣が消えるように、細工もしましたか...?」


イザベラの悲痛な問いに、ユリウスは当然の如く頷いた。

こんの、天才がーーーー!!

収まったはずの殺意が再び沸き上がる。

おまけにイザベラは魔術陣を見ていないので、相殺魔術を組み立てることもできない。


「じゃあ先生が相殺魔術組んでくださいよ!!」

「それも無理だな。あらゆる魔術による干渉も受け付けないようにしている」


言葉を失う。

何故理論が完璧ではないくせに、そんな強固な魔術崩し対策をしてしまうのか本当に理解に苦しむ。

しかも、こんな危機的状況だと言うのに、ユリウスは何故か平然としている。

一旦ユリウスを頼るのをやめようとイザベラは自力での解決を試みることにした。

扉や窓など外に繋がる出入り口を調べてみたが、やはり開かない。

開閉の魔術や、解除の魔術、少し手荒だが爆破魔術も試したが、びくともしなかった。

いつの間にか自身の席から来客用のソファにもたれかかっているユリウスは慌てるイザベラの様子を無表情で観察していた。

さすがにこれ以上は何をやっても無理だと諦めたイザベラはユリウスに近付く。

頭上の数字は10分を切っていた。