恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



そこには数字の羅列が浮かび上がっており、一秒ごとに数字が小さくなっていく。

最初は『30:00』から始まっていた数字が、もうすぐ『29:00』に差し掛かろうとしていた。


「30分のカウントダウンをしている...?」

「そうだ」


イザベラの言葉に、ユリウスが反応する。

得意げな表情にイザベラは不穏な雰囲気を感じ取った。


「何で、ですか...?」

「30分後に部屋が爆発するからな。視覚的に見えていたほうが臨場感も出て、わかりやすいだろう」

「は?」


信じられない言葉に耳を疑う。

しかし、思考を止める間もなく、イザベラはユリウスに詰め寄る。


「なんで、そんなことするんですか...!?」


叫びにも似た訴えに、ユリウスは怯むことなく続ける。


「先日、吊り橋効果というものを文献で見た。命の危機的状況に陥った場合、人間は恋に似たような感覚が芽生えるというものらしい」

「...それで?」

「ものは試しだと思い、30分以内に恋が芽生えないと部屋が爆発する魔術を作った。そして、今発動させた」

まったく悪びれる様子もなく言い切ったユリウスにイザベラは恐怖を覚えた。

この男、そんな危険な魔術を説明もなしにいきなり発動させたのだ。

しかも、人が上機嫌になっている隙をついてやったとなると、ますます恐ろしい。

このためにケーキを買ってくれたんだと思うと、先ほどの感謝を今すぐ返してほしい気持ちになる。