恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



髪に寝癖がついているし、シャツの襟も立っていて、今すぐにでも整えにいきたい衝動に駆られたが、イザベラは必死にそれを抑える。

視界にユリウスを入れないように自身の席まで移動し、腰掛ける。

そして顔を上げることなく、そのまま作業を始めようと書類に手を伸ばそうとしたその時。

ユリウスが小さくくしゃみをする音が聞こえてきた。

イザベラは動きを止め、恐る恐る視線だけをユリウスに向ける。

まだ眠たいのか、ユリウスの頭が小さく揺れている。

そういえば、先生、寝起きにカフェインを摂取しないとずっとぼんやりしてて、使い物にならないんだよな...。

しかし、ここでユリウスを甘やかしてはいけないとイザベラは首を振る。

内心気が気でないイザベラだったが、子供ではないんだから、コーヒーぐらい自分で淹れられるだろうとそのまま放置する。

暫くすると、限界が来たのか、ユリウスが机に突っ伏す。

さすがにイザベラもこれ以上は我慢ならず、まったく進んでいない作業を中断し、ユリウスに駆け寄る。


「大丈夫ですか、先生」

「んっ...、問題ない...」


問題ないと言いながら、顔が机から上がってこない。