今まで見たことのない術式がそこには刻まれており、脳が解読を拒否しているのか、まったく理解ができない。
まさか、先ほどの失礼極まりないあの男性がこの魔術陣を構築したというのか。
こんな化物みたいな魔術師がいるなんて、さすが王宮直属の魔術機関、魔術省...。
イザベラはその場にへたれ込んだまま、食い入るように桜の木に刻まれた魔術陣を眺めた。
その後、その化物みたいな魔術師が天才と謳われた変人、ユリウス・フローベルということを知った。
あの出来事以来、何故かユリウスのことが気になってしまい、彼の姿を見かけては目で追ってしまう。
ある時は石につまずき、顔から噴水に飛び込んだり、またある時は廊下のど真ん中で死んだように横たわっている。
あまりにも危なっかしすぎて、見ているこっちの心臓が保たない。
怖いのはそんなユリウスの状態を周りの人間が黙認し、誰も助けようともしないことだ。
イザベラも経験したからわかるが、きっと助けたところで暴言を吐かれるのがオチなので、誰も助けたがらないのだろう。
しかし、気になる。

