恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



庭園の隅、立派な桜の木が、花を咲かせ、堂々と鎮座していた。

風が吹くたびに花びらが、庭園中を駆け巡る。

ここより遥か東の国が生育地である桜は文献などでよく見かけていたが、実際に見るのは初めてだった。

初めて見る桃色の花々の美しさに魅了され、イザベラは無意識に桜の木へと近付いていく。

しかし、昨日まで庭園に桜の木などなかったはずだ。しかも本来の開花時期とも合わない。

桜の花を見上げながら、色々な疑問が頭を過る。

ふと木の根元に視線を向けると、散り落ちた桜の花びらが山のようになっていた。

桃色一色の山の中に、黒色が見える。

一体なんだろうと、よく目を凝らして見てみると、なんと人間の足のようだった。

えっ、まさか人が埋まってる...!?