恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



「行動があまりにも常軌を逸しているから、彼のせいでアカデミーのルールを根本から見直したって噂もあるぐらいよ」

「へー、そうなのね...」


しかし、このときのイザベラはユリウスに対してそこまでの興味を示すことはなかった。

それよりも、どこの研究室からのお誘いを受けるべきか頭を悩ませていたからである。

国家資格である魔術師になったのはいいが、イザベラは他の魔術師たちと違い崇高な動機も、野望もない。

ただ単に魔術師になって魔術省に勤めることができたら、食い扶持には困らないだろうとひどく俗っぽい理由で、ここまで来た 。

同僚と別れ、食堂から出たイザベラは庭園に向かって足を進める。

魔術省に入ったばかりで覚えることが、考える事が多くなり、少しだけ気疲れしていたので気分転換に散歩でもしよう。

庭園に近づくにつれ、空気が冷えていく。

遠目から見える庭園は、秋を終え冬へ移ろうとしていたので、草花や木々は枯れ、少し殺風景に見える。

しかし、そこに足を踏み入れた瞬間、不可思議な光景に目を見張った。