恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで




鏡の前で腰まであるピンクベージュ色の髪を後ろに束ね、前髪を整える。

玄関の横に掛けてある魔術省専属魔術師の証である大鷲が背面に刺繍されている濃い紺色のローブを羽織り、乱れがないか最終確認する。

よし、こんなものか。

通勤用の鞄を肩に掛け、部屋を出る。

イザベラが王都内に借りている部屋から職場の王宮内研究室までは徒歩で凡そ15分。

朝早くから賑わう城下の市場通りを抜けると、王宮に続く門に向かう。

正門には門番もいるが、実際に入門検査を行っているのは、地面に刻まれた魔術陣だ。

許可のない者が魔術陣の上を通ると、鉄柵が直ちに降りてきて進路を阻む設計になっている。

この仕組みを考え出したのは、この国に魔術を一般的な学問にまで落とし込んだ鬼才、カイアス・フローベル。

ユリウスの曽祖父である。