恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



「ちょ...!!先生、何してるんですか!?」


髪の毛をびしょびしょに濡らしたまま部屋の中をうろつくユリウスにイザベラは慌てて立ち上がる。

足元を見ると、休憩室から水の跡が点々と続いている。

何故、拭かないまま出てくる!?

これ以上被害を出さないために、ユリウスを来客用のソファに座らせ、休憩室から急いでタオルを持ってくる。


「もぉー、このままだと風邪引きますよ!!」


タオルを頭から被せ、髪を拭こうと手を伸ばす。


『気安く触るな、鬱陶しい』


そこで一瞬、何故か先ほどのユリウスの言葉を思い出し、動きが止まる。

触るのを躊躇っていると、ユリウスが首を後ろに傾け、イザベラを見上げる。


「...どうした?」


タオルから覗き込む、紫水晶の瞳が真っ直ぐイザベラを見る。


「っ、なんでも、ありません!!」


自分でもよくわからない行動を誤魔化すかのように、イザベラは力いっぱいユリウスの髪を拭き上げる。


「おい!!もう少し加減しろ!!髪が抜ける!!」

「だったら、自分で拭いたらいいんじゃないですか!?」


一瞬だけ胸の奥がざわついたが、ユリウスのせいですぐに意識から追いやられる。

こうして、本日も何も進まないまま一日が終わるのであった。