恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



先ほどユリウスがグロリアに向けた冷めた表情と態度を思い出す。

......先生も、もう少し大人になってくれればな...。

イザベラは泥と水で汚れてしまったローブを脱ぐ。

乱れた髪を整え、グロリアに持って帰ってきてもらった書類に視線を落とす。

最近流行っている未知の感染症についての見解と、それを治療するために必要な魔術構築の仮説が書かれている。

魔術理論と構築分野の研究を主に行っているユリウスには他の研究室から魔術陣の構築依頼が来ることがある。

天才なので動き始めたら一瞬で終わるのだが、興味のある案件しかやりたがらず、動き始めるまでがとにかく長い。

必死に煽てて、慰めて、褒め称えて、やっと重たい腰を上げてくれる。

とてつもない労力が必要になるので、どうしてもユリウスでしか出来ないこと以外はもう自分でやることにしている。

書類に目を通していると、休憩室の扉が開く音が聞こえた。

風呂から上がったのかと、最初は特に気にせず、作業を続ける。

しかし、明らかに大きすぎる水音が気になり、顔を上げる。