恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで




「イザベラ」

医療魔術特化研究室からの帰り道、ふいに名前を呼ばれ、振り向くと、軍服姿の長身の女性と目が合う。


「グロリア様!」


高い位置で結んだ金髪を翻し、グロリアは迷いなくイザベラの前まで歩いてくる。


「お久しぶりです!お噂は聞いておりました。上官に昇進なされたんですよね」

「ありがとう。上官といっても、まだまだ下っ端だよ」


紫水晶のような瞳を細め、グロリアは柔らかく微笑む。

服や髪に乱れがなく、きちんと人の目を見て、話してくれる。

本当に人として当たり前のことなのに、常日頃からそれさえ出来ないユリウスと接しているため、こんな些細なことで感動してしまう。


「こんなところで珍しいですね、先生にご用事でも?」


グロリアはユリウスの姉で、二人とも王宮に勤めているが、グロリアは軍人のため魔術部門に普段来ることはない。

だから、ユリウス関連で訪ねてきたと思っていたのだが、グロリアは困ったように眉を下げる。