恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



いつも使っていた髪留めが千切れた日から、ジョシュアから貰った蝶々の形をした髪留めをイザベラは身に付けていた。

他に代わりの髪留めもないし、新しく買うお金も勿体ないので丁度いいやと普段使いしていたのだが、まさか鬱陶しいと言われるとは思っていなかった。

瞳を瞬かせ、ユリウスを眺めていると、彼はますます苛立ったのか、続けざまに声を張り上げる。


「だから、その髪留めは気が散る!!そのせいで作業効率が落ちるので、付けるな!!」

「...は?」


なんて理不尽な物言いだろう。

まさか最近不機嫌だったのも、この髪留めのせいだと言うのだろうか。

意味がわからない。

しかし、あまりにも凄んでくるため、イザベラはトランクケースから渋々一つ選ぶことにした。

本当にどれでもよかったため、真っ先に視界に入ってきた紫色の花の髪留めを手に取る。

鋭い視線で、今すぐにでも付け替えろと訴えてくるため、イザベラは髪を解き、選んだ髪留めでもう一度束ねた。


「...これで、満足でしょうか?」

「.........」


ユリウスは何も言葉を発しなかったが、暫くイザベラの後頭部を凝視すると、何事もなかったかのように自分の席へと戻っていく。


「先生、これ!忘れてますよ!」


そのまま机の上に放置されたトランクケースを持ち上げて見せるも、もうすでにどうでもよくなったのかユリウスは一瞥もくれなかった。