しかし、そんなイザベラの予想は大きく外れた。
翌朝、研究室に入ると、ユリウスはいつも通り眠そうに作業していた。
けれど、イザベラがコーヒーを置くために近付いた途端、鋭い瞳で凝視してきた。
いったい、なんなのだ。
直接聞いても、すぐに視線を逸らされて、なんでもない、と不貞腐れたように返事をされる。
それで背中を向けた途端に、ものすごい視線を感じるのだからなんでもないわけがない。
しかし、それ以上言及すると殻に閉じこもった貝のように何に対しても反応しなくなる恐れがあったため、イザベラは放置することにした。
それからのユリウスは機嫌が悪いのもあってなのか、何をするのにも苛ついており、作業の進みがいつもより遅い気がする。
そんなある日、イザベラが用事を終え、研究室に戻ると、部屋の中はもぬけの殻だった。
今日はどこに行ったんだろうと、持っていた書類を机に置き、ユリウスを探しに行こうとドアノブに手をかけようとした瞬間、扉が思いっきり開かれる。
驚いて顔を上げると、ユリウスが仏頂面のまま部屋に入ってきた。
自分で帰ってくるなんて珍しいと軽く感動していると、ユリウスに軽く睨まれる。
そして、ユリウスは持っていたトランクケースをイザベラの机に叩きつけ、中を開けた。
すると、そこにはたくさんの値札付きの髪留めや髪飾りがケースいっぱいに並んでいた。
「その中から好きなものを選べ」
「えっ、なんでですか...?」
突拍子もないことを言われ、見上げると、ユリウスが腹立たしそうに舌打ちをする。
「その、髪留めが非常に鬱陶しい」
「髪留め...?」
何のことかと、イザベラは自分の後頭部に手を添える。

