恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



このままでは埒が明かない。

そこで、イザベラがユリウスを、サミュエルの助手がサミュエルを、それぞれ説得することになった。

何を言っても、どんなに煽てても、称賛しても、唇を尖らせ、そっぽ向かれる。

サミュエルの言葉通り、体ばかり大きくなってしまった子供である。

いや、子供のほうがまだ聞き分けがいいので、言葉の通じない赤ちゃんに近い。

もう本当にどうすればいいかわからず途方に暮れたイザベラはついムキになってしまい、自分でも訳のわからないことを口走ってしまう。


「このままへそ曲げ続けるんだったら、これから先生のコーヒー、全部熱々のまま出しますからね!!火傷しても、知らないんですから!!」


しかし、この言葉が意外と効いたらしく、今まで無反応だったユリウスが眉間に皺を寄せる。

不快そうに顔を顰め、腕を組み、暫く考え込む。

そして、ユリウスはのろのろと立ち上がり、近くの執務机の椅子に座った。

サミュエルとその助手は呆然とそんなユリウスの行動を見ていたが、イザベラはすぐさま紙と万年筆を彼の前に置いた。


「先生、一応感染症についてまとめた資料を...」

「必要ない。全て記憶している」


万年筆を手に取り、ユリウスは目にも留まらぬ速さで数々の魔術記号を描いていく。