恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



酷すぎる暴言に、怒り心頭のサミュエルがユリウスの胸ぐらを掴み、その頭を激しく揺らす。

体力のないユリウスは抵抗する気すらないのか、されるがままだ。

普段は温厚なサミュエルが、ここまで怒るとは。

気になったイザベラは、机の上の書類を手に取った。


「こ、これは...」


その内容に、イザベラは目を疑った。

それは以前ユリウスに目を通すように依頼した最近、巷で少し問題になっている未知の感染症の治療法についてのものだった。

冒頭はイザベラがまとめ上げたもので、問題なのは最後のページ。

ユリウスの筆跡で大きく『興味ない』と書かれていた。

珍しくユリウス自ら提出しに行ったことに感心してしまい、内容の確認を怠ってしまったことをイザベラは深く後悔した。


「申し訳ありません、サミュエル先生。こちらの確認不足です」


申し訳なさそうにイザベラが目を伏せると、ユリウスの首を締め上げていたサミュエルが表情を緩め、振り返った。


「いや、イザベラ君に責はない。むしろ、此度の件についてまとめてくれて非常に助かっている。さすがと言うべきだ。問題なのは...」


胸ぐらを掴んでいた手を離し、サミュエルは片腕をユリウスの首に回す。

か細い腕のどこからそんな力が出ているのか、そのままユリウスを片腕だけで持ち上げた。


「この小童だ。イザベラ君には悪いが、少しの間借りていく」

「ふざけるな、この老害!!離せ!!」

「黙れ小童!!いつまでも手を焼かせおって...、それでは、用を済ませたら返す」