恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



ギリギリの時間だったが、なんとか定刻通りに研究室に来ることが出来たイザベラは自分の席に座ると、安堵の息を漏らす。

例のごとく、朝が弱いユリウスは気怠そうに分厚い魔術書を何冊も読み漁っている。

時折、欠伸をしては眠たそうに目を擦っているので、そろそろコーヒーを用意したほうがいいなとイザベラが立ち上がった瞬間、研究室の扉が勢いよく開いた。


「フローベルの小童!!このたわけが!!!」


ユリウスへの暴言とともに部屋に入ってきたのは、白髪が目立つ小柄な老人、医療魔術特化研究室の感染症対策専門の魔術師、サミュエルだった。

突然の来客にも関わらず、ユリウスは顔を上げずに、何事も起きていないかのように魔術書を読み進める。

そのことにますます腹を立てたのかサミュエルは物凄い剣幕でユリウスへと詰め寄る。


「先日依頼した魔術陣、これはいったいどういうことだ!!!」


持っていた書類を机に思いっきり叩きつけ、サミュエルは今にも噛みつきそうな勢いでユリウスに迫る。

そこでようやく顔を上げたユリウスは、煩わしそうにサミュエルを見上げる。


「なんだ、医術の枯れ木。貴様の相手をしている暇はない、帰れ」

「きーさーまー!!!」