恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



デートの報告書をユリウスの机から引ったくり、荷物を持って、部屋の扉まで向かう。

最後にイザベラは確認するように振り向くが、相当ご立腹なのか椅子を反転させ、イザベラに背を向けている。


「...先生。休日ぐらい休まないと、本当に体、壊してしまうのでほどほどにしてくださいね」


そう言い残し、イザベラはユリウスの研究室を後にした。

もちろん、ユリウスから返事はなかった。

家までの帰り道、不意に先ほどの研究室での出来事を思い出した。

何気なく自身の掌に視線を落とす。

さっき包み込んだユリウスの手は、思っていたよりも無骨で大きかった。

今さらその感触が妙に気になって、イザベラはそれを振り払うように、何度も手を握ったり開いたりした。

それでも中々消えなかったので、色々あって疲れたのかなとイザベラは急いで帰宅しようと、足を速める。

こうして、イザベラの初デートは何一つ予定通りに進まず、惚れ薬完成までの道のりはまだまだ程遠いものなのであった。