恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



ただならぬ空気を察知したのか、ユリウスが警戒するように体を僅かに引く。


「...何をするつもりだ」

「すぐに終わりますから」


逃げる隙を与えず、イザベラはすぐにユリウスの片手を自分の両手で包んだ。

別れ際、ジョシュアにされたように、それを自分の胸元に引き寄せる。

紫水晶の瞳を真っ直ぐ見つめると、微かだが揺れているように見えた。

何故か胸の奥が落ち着かず、妙に緊張する。

しかし、ここまでやってしまったらもう勢いで行くしかないと、イザベラは微かに震える唇を開ける。


「好きです」


二人の間に沈黙が流れる。

擬似的だが、愛の告白をしたというのに無反応なユリウスにイザベラは気付かれぬように彼の様子を窺う。

しかし、少し経ってもユリウスは無表情のまま微動だにしない。


「せ、先生...?」


さすがに心配になり声をかけると、紫水晶の瞳がイザベラを睨み上げる。


「いったい、何のつもりだ」


いつも通り、冷やかな声をぶつけられ、イザベラの試みは不発で終わったのだと理解した。