下に降りると、いい匂いがしていた。
宗介のお母さんがクッキーを焼いていたのだ。
「出来立てよ。」
キッチンでチョコとバニラのクッキーをミトンでオーブンから取り出しながら、宗介のお母さんが言った。
「宗介が恋ちゃん以外連れてくる事なんて滅多にないんだから。クッキー作って置いて良かったわ。みんな食べていってね。」
「いただきます!」
「わあ、おいしい!」
理央と篠田さんが縁側に座ってクッキーを食べているのを、古賀くんが撮影している。
宗介は和室の立派な柱に寄りかかって、ため息をついた。
新聞部がクッキーにカメラを向けるのを見ながら、恋はくすくす笑った。
「何笑ってんの、恋」
宗介が言って、恋を睨んだ。
「だって、宗介が友達に囲まれてるなんて、滅多にないから」
「なくて結構。お前は、笑ってんじゃないの。」
宗介はきっぱりそう言うと、恋の頭を軽く叩いた。
「……シャッターチャンス」
「記事にするわ」
「黒白王子の姫は、果たして、黒王子と白王子、どちら選ぶのでしょうか……」
淡々とした古賀くんのナレーション。
ビデオに向かってフォーカスされた宗介はまた怒り笑いで、
「鬱陶しいんですけど」
と一言呟いたのだった。



