メイドから呼ばれて恋達がエントランスホールに出ていくと、
「こんにちはー」
動きやすい格好をした新聞部の伊鞠と桂香と、ビデオカメラを持った黒髪の男の子が一人と、うららと篠田さんと親衛隊達が居た。
「樋山くんちの自宅訪問、噴水のお庭の外観からバッチリ撮ったわよ。噂に違わぬ御曹司っぷりね。ふーむ玄関に飾られてる絵は有名画家のもの……私服姿の白王子もバッチリ撮るわよ。」
「加納さん、撮影対象にそれでいいんですか」
メガネを掛けたビデオカメラを持った男の子が平坦な声で言った。
「放送するなら、もっと掘り下げて。例えばこの見るからに高そうな青の白磁の壺を映すとか」
「そうね。古賀くん、キミを呼んで良かったわ。ゲームの勇者だったら壺は割るところだけど、私は新聞部の記者だから記事にするのよ」
「うわ……僕んちの壺、あんまりペトペト触らないでくれません?。割るなんてとんでもない。観賞用なんだから。」
不服そうに言った美風に、男の子が即座にビデオカメラを向けた。
「映さないでください!」
「はは、そういう訳には」
「古賀くんって言うのよ。」
伊鞠が紹介した。
「私達新聞オタクだけど彼は放送オタクなの。撮るの超うまいのよ。良い映像を作るために努力してる。」
「古賀泰貴って言います。よろしく。」
泰貴は無味乾燥な声で言うと、今度は脇に居た宗介をメインにして撮影し始めた。
「ちょっと、ここは樋山んちなんだから、僕じゃなくて樋山を撮れよ」
「良い番組の構成上、黒白王子を均等に映すんですよ。」
「まったく。僕はノーコメント。全部樋山に聞いてください。樋山んちなんだから。」
「新田恋。いつでも美風様の家に遊びに来れるなんて、羨ましいこと山のごとし。うちにも白磁の壺があるけど、美風様のうちのとは作家が違うみたい。」
「黄崎先輩もお嬢様なんですよ。」
一緒に来ていた篠田さんが説明した。
「超お金持ちで、親衛隊の会費お小遣い切らしてる人の分いつも払ってくれるんです。毎回助かってます!」
「当然。親衛隊はみんな仲良しだよ。誰が欠けても成り立たない。美風様、私今良い事言いました!。今日はハッピー、美風様のおうちに来れるなんて。」
「この靴入れと傘立ては、海外の有名ブランドのものね。ふうむ、北欧系……」
勝手に傘立てを斜めにして見ながら、伊鞠が言った。
「傘立ても映しましょうか。」
「ああもう、いいけど。しょうがないから。上がるんならさっさと上がってください。」
広い高級な玄関は、人が何人居ても一向に狭苦しい感じがない。
美風が言って、一同は家へ上がった。



