都内の駅の近くの駐車場にはロケバスが待っていた。
天気のいいからっとした辺りの空気の中、大きなバスの周りで数名、洋服の山と忙しそうに作業しているアシスタントさんが居る。
車に向けて写真を撮っている一般人の女の子達も沢山居た。
「さっさと先に乗って静かにしてようぜ」
宗介がそう囁くと、律が、
「僕飲み物買ってきます。お気に入りじゃなきゃ飲む気しないんですよ。」
と言って財布を出した。
「恋、恋も行きましょ。」
恋は律に引っ張られて宗介と美風を置いて自販機へと歩いた。
駐車場の自販機は空いていた。
スポーツドリンクに緑茶、オレンジや林檎ジュースのラインナップ。
律がレモンのスポーツドリンクを買おうとしている時、恋は、ふと、後ろから呼び止められた。
「ほな、あんたが新田恋やんな?」
振り向くと、すらりとした立ち姿に、グレーのサングラスを掛けた、お洒落な格好をした男の子。
「お初にお目に掛かります。ワイが、綾瀬翔やってん。」
男の子は片手でサングラスをカチャリと外した。
女の子受けしそうな整った小さい目鼻のすっきりした丸顔がにっと笑った。
戸惑った恋は声が出せなかった。
「綾瀬翔?」
振り返った律が呟いた。
「どっかで聞いた事あるな。僕達に何か?」
律は警戒して恋を庇うよう立っていた。
サングラスの男の子は律にちょっと驚いた顔をしていたが、急にケラケラ笑い出した。
「ちゃうちゃう。ワイ、タレントやよ。『coco.』の『Mint』の。専属の。なんで?知らんかってんな。」
「えっ」
「あぁ、思い出した。僕と同じ年のモデル。今度から始まるブランドイメージの。そういや綾瀬って奴だったっけ。」
なるほど、と頷いた律と翔を、恋は交代ばんこに見比べた。



