宗介の家に着いた恋は、狐の姿になると、リビングに入った。
恋を追いかけて来た宗介は狐の恋を抱き上げると肩で凭れさせた。
宗介は恋を抱いたままキッチンへ入り冷蔵庫を開けると、苺の皿と牛乳を出して、 脇のケージの空の銀皿に入れた。
宗介の肩から降りた恋は屈んでそれを食べながら、宗介が雑誌『coco.』を開くのを見ていた。
「ただいま。あら、恋ちゃん来てたの。」
遅れて入って来た宗介のお母さんが、買い物袋をテーブルの上にどさりと置いた。
「母さん。おかえり。」
「雑誌を宗介が買うなんて珍しいわね。」
「恋が載ってる奴。こいつモデルだから。綺麗に写ってるけど、僕はどうかと思う。」
「あぁ、スカウトされたって言ってたわよね。」
宗介が立ち上がって雑誌を母親に見せると、母親はダイニングのチェストの上のメガネを取り出して見た。
「恋ちゃんはちょっと綺麗すぎるもんね。普通じゃありえないわ。あやかし狐の女の子ってバレちゃわないかしら。心配だけど。」
母親は言いながらページを捲る。
「メイクすると切れ長の狐顔だしね。手足長くて細くて、お人形さんみたい。『coco.』ってお洒落な雑誌なのね。」
「僕は、容姿見せびらかすのどうかと思ってる。綺麗なのは見りゃ分かる。タレント活動みたいになって、恋の秘密がバレたらって思うと、気が気じゃないんだよ。」
「大丈夫だよ。」
どろん!と人の姿に戻った恋が言うと、宗介は恋の頭を乱暴に撫でた。
「宗介も載ってるよ」
「あら?」
恋が宗介の写真のページを開くと、母親はぱっと嬉しそうな笑顔になった。
「宗介。もうちょっとお洒落しなさいよ。買ってあげた可愛いお洋服着ないで、どうしてスポーツブランドばっかり着るのよ。勿体ない。」
「僕はファッション興味ない。着飾るのは面倒くさい。洒落込むのは女子だけで良い。」
「樋山くんも、狐の男の子も写ってるんですよ」
恋達はしばらく『coco.』を見ていた。



