10歳下のキミに初めて恋をした

「どうしてここに……仕事中なのに、困るよ、健太くん」





動揺を隠しきれない麗奈に対し、健太は一歩、また一歩と距離を詰めてくる。





かつての甘えん坊の面影は消え、そこには一人の強烈な男性としてのオーラを放つ健太がいた。







「『くん』って呼ぶなよ。ずっと、そう呼ばれるのが嫌だった」





健太の瞳には、かつての少年のような無邪気さではなく、熱い執着と切なさが宿っていた。





「俺が俳優になったのは、テレビに出れば、どこにいても麗奈ちゃんが俺を見てくれると思ったからだ。いつだって、俺の基準は麗奈ちゃんだった。……俺は、あんたに認めてほしかった。子供扱いじゃなくて、一人の男として見てほしかったんだよ!」





健太の言葉に、麗奈は息を呑んだ。





健太にとっての十年もまた、自分と同じように「麗奈」で満ちていたのだと知った瞬間、堪えていた涙が溢れそうになる。





「ずっと、好きだったんだよ……ずっと前から」





震える声で紡ぎ出された健太の告白は、十年の時を溶かすには十分すぎるほどの熱を帯びていた。





健太のまっすぐな想いを受け止めたとき、麗奈の中で長年縛られていた「親戚だから」「年下だから」という鎖が音を立てて崩れ去った。





もうあの日の八歳の少年ではない。





目の前にいるのは、世界でいちばんかっこよくて、世界でいちばん自分を愛してくれている男性だった。





「……私も、ずっと好きだったよ。健太」





麗奈が震える声でそう答えた瞬間、健太の表情が子供のように柔らかくほどけ、そして今まで見たこともないほど深く、麗奈を抱きしめた。





「やっと言わせた」と耳元で低く甘く囁く声に、麗奈は恥ずかしさで顔を真っ赤にする。





世間から見れば、大人気イケメン俳優と一般女性の年の差恋愛。





スキャンダルにだってなりかねない危うい関係かもしれない。





それでも、十年の歳月をかけてお互いだけを見つめ続けてきた二人の絆は、もう誰にも引き裂くことはできない。






「これからは、お姉ちゃんじゃなくて、俺の恋人にしてよ」





まばゆいスポットライトの陰で、二人の初恋は、十年越しの本当のはじまりを迎えたのだった。