10歳下のキミに初めて恋をした

麗奈が大学を卒業し、社会人として慌ただしい日々を送り始めた頃、健太は突如として麗奈の前から姿を消した。





「芸能界のオーディションに合格したから、東京に行く」





――突然の置き手紙を残し、健太は夢を追うために家を出て行ったのだ。





それからの日々は、あまりにも静かだった。





テレビをつければ、急激に頭角を現した新人若手俳優として、健太の顔が画面を賑わせるようになる。





日に日に人気を増し、世間から「この世界でいちばん美しいイケメン俳優」と称賛される健太の姿を、麗奈は遠く離れた実家のリビングで、ただただ呆然と見つめていた。





「遠い人になってしまったな」





そう呟く胸の痛みは、十年前の初恋がまだ終わっていない証拠だった。





あの日、あんなに小さかった男の子は、もう手の届かない眩しい星のようになってしまったのだと、麗奈は自分に言い聞かせるように、その恋の形見をそっと心の奥底に鍵をかけて封印した。