財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 そうだった。彼の価値観は、私とは正反対なんだった。

 初デートの時、有名ブランドの一点物の衣装をたくさん買ってもらった。
 銀座での買い物の時も、服やアクセサリーを山ほど買ってもらった。
 だけど、幼稚園と自宅の往復では、使い道なんてない。

『使ってこそ、経済が回る』

 そう言われたら、それ以上何も言えなくなってしまう。

「それと、親交を深めたい人もいて、夫婦で挨拶したいんだ」
「えっ……!」
「結婚式とか挙げてないだろ、俺ら。だから、体面的に挨拶の場も必要かと思って」
「……そうだね」

 急な入籍だったし、契約結婚だから、結婚式なんてものは最初から話題にすら挙がっていない。

「まあ、片桐グループからも出席する者もいるし、仕事関連が多いと思うけど、挨拶程度だから……そんなに気負わなくても大丈夫だからな」
「……うん」

 彼には本命の女性がいる。
 だから、結婚したことを大々的に発表したくないのかと思っていた。

 片桐グループ内での立場を保っていられたらいいのかと思っていたけれど、違うみたい。
 形だけの挨拶の場だとしても、彼の知り合いに〝妻として〟紹介してもらえるということが、本当に嬉しい。