財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 数日後の夜。
 入浴を済ませ、スキンケアを施していると、ドレッサーの上に置いてあるスマホが、ブブブッと震えた。
【惺也くん 受信一件】とスマホの画面に表示されている。

 なんだろう?と思い、メールを開くと、【急な出張でしばらく留守にする。何かあったら連絡して】と相変わらず業務連絡のような簡素なメールだった。
 スタンプ一つないメール文に、無意識に小さな溜息が漏れる。
 そして、何度も読み返すうちに、胸の奥に渦巻く黒い靄のようなもの感じた。

 これって、……愛人宅に泊まるための理由?

 本当に急な出張だとしても、わざわざこんな夜遅くにメールすること?
 きっと、本命の彼女が彼を帰したくなくて引き留めたに違いない。
 好きでもない女の元に、愛する男性を送り出せる女性がいるとは思えないのだから……。

 胸がぎゅっと掴まれたように痛む。どうしてこんなに苦しいの……?
 契約結婚だと、割り切って結婚したはずなのに……。
 最初から、私たちの間には恋愛感情なんて必要ないとわかっていたのに……。

 たとえ愛のない結婚だとしても、一緒に生活するうちに、いつか愛してもらえるんじゃないかと、心のどこかで思っていたのかもしれない。
 
 ううん、違う。
 高校時代とは違う、成長した彼に惹かれて、いつの間にか、好きになっていたんだ……。
 だから、本命がいるとわかったあの夜も、切なくて涙が溢れたのね。

 自分の気持ちに気づいた瞬間、とめどなく涙が溢れてきた。止めようとしても止まらない。
 好きだから苦しいし、想いを口にすることも許されない。私はカモフラージュするための、偽装の妻。

 改めて認識した自分の立場に、胸がきつく締めつけられた。
 こんなにも、好きになっていたなんて――。