財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 借金を肩代わりするだけでなく、無期限の再建のフォローと事業計画の見直しも提案するという言葉に、さすがの私の心も揺らいでしまう。

 男は微動だにせず、私をじっと見据えたまま。

「結婚だ。契約書を交わしても構わない」
「は……?」
「お前の家の借金くらい、俺のポケットマネーでどうにでもなる」 
「なっ……」

 何なの~‼
 彼にとったら五億円ははした金かもしれないけれど、言い方ってものがあるでしょ!
 結婚を、ビジネスの駒とでも思ってるのかしら?

「父の会社の借金と、私の結婚は別物です! 二度と私の前に現れないで……!」

 私は無我夢中で車を降りた。

「ここ……どこよ!」

 恐怖なのか、怒りなのか、わからない震えがこみ上げてくる。
 鞄からスマホを取り出すと、十九時半はとうに過ぎていた。
 私は仕方なく、保険会社の人にメールを打つ。

【急なトラブルで、今日お会いするのは難しくなりました】

 心の中で〝ごめんなさい〟と詫びながら、スマホの地図で現在地を確認。
 最寄り駅まで数百メートルの距離だったことに安堵した。

 それにしても、どうしよう。
 本当に、どうしたらいいの……?
 父の会社の借金問題は、何一つ解決していないのに……。
 ふりだしに戻ったことで、要らぬダメージを受けたような私は、ふらつく足で駅へと向かった。