財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

「人をお金で判断して何が楽しいの? 片桐くんの方が、よっぽど心が貧しいよ」
「っ……⁉」

 李茉の言葉に、胸の奥に鋭い痛みが走った。
 その痛みは、次第にじわじわと広がっていった。

『心が貧しい』――その言葉は、俺の人生で初めて向けられた〝否定〟だった。
 
 俺に向けられるのは、決まりきった称賛と従順な態度ばかり。
 その世界では、俺が〝完璧〟であることが前提だった。
 だからこそ、彼女の言葉は異質で鋭く、忘れられなかった。

 胸の奥に、得体の知れない熱が生まれた。
 怒りでも羞恥でもない。ただ――初めて、心の底から揺さぶられた。

 その感覚の正体は、当時の俺にはわからなかった。

 ただひとつだけ確かなのは――あの日から、俺の中で彼女は〝特別〟になった。