***(惺也視点)
李茉が勤務する幼稚園の園長宅に招かれた日。
園長夫妻の前で『高校時代から片想いをしていたんです』と口にした瞬間、李茉の肩がわずかに揺れた。
驚きと戸惑い、信じられないという表情。
そして――俺の言葉の真意を探ろうとする、澄んだ瞳。
十年前と何一つ変わらない。
その瞳を見た瞬間、胸の奥に沈めていた記憶が、静かに浮かび上がる。
――初めて、彼女と会話を交わした日のことを思い出す。
俺と李茉が高校二年の春。
俺らが通っていたのは、都内でも有名なセレブ校。大企業の子息令嬢が集まる、〝選ばれた者の箱庭〟のような学校。
あの頃の俺は、自分が〝完璧〟だと疑いもしなかった。
片桐財閥の後継者として育ち、学業でも運動でも、一度も負けたことがなかった。
しかも俺の親は、学校に多額の寄付をしていた。
だから、誰もが俺に頭を下げ、当然のように俺の機嫌を取る。
俺の前では、誰も本音を言わない。それが〝普通〟だと思っていた。
そんな世界の中で――彼女だけが、まったく違う色をしていた。
同じクラスになったことで、嫌でも視界に入る。
九石 李茉。地域密着の町工場を経営する親を持つ娘。
幼い頃から地域の人々とのつながりを大切にしていて、中学生の頃から地元のボランティア活動に参加していた。
その活動姿勢と学力が評価され、特待生として入学したらしい。
庶民がなぜここに?
――当時の俺は、本気でそう思っていた。
だが、彼女は大企業の子息令嬢たちの中にいても怖気づくことなく、いつも笑顔を絶やさなかった。
李茉が勤務する幼稚園の園長宅に招かれた日。
園長夫妻の前で『高校時代から片想いをしていたんです』と口にした瞬間、李茉の肩がわずかに揺れた。
驚きと戸惑い、信じられないという表情。
そして――俺の言葉の真意を探ろうとする、澄んだ瞳。
十年前と何一つ変わらない。
その瞳を見た瞬間、胸の奥に沈めていた記憶が、静かに浮かび上がる。
――初めて、彼女と会話を交わした日のことを思い出す。
俺と李茉が高校二年の春。
俺らが通っていたのは、都内でも有名なセレブ校。大企業の子息令嬢が集まる、〝選ばれた者の箱庭〟のような学校。
あの頃の俺は、自分が〝完璧〟だと疑いもしなかった。
片桐財閥の後継者として育ち、学業でも運動でも、一度も負けたことがなかった。
しかも俺の親は、学校に多額の寄付をしていた。
だから、誰もが俺に頭を下げ、当然のように俺の機嫌を取る。
俺の前では、誰も本音を言わない。それが〝普通〟だと思っていた。
そんな世界の中で――彼女だけが、まったく違う色をしていた。
同じクラスになったことで、嫌でも視界に入る。
九石 李茉。地域密着の町工場を経営する親を持つ娘。
幼い頃から地域の人々とのつながりを大切にしていて、中学生の頃から地元のボランティア活動に参加していた。
その活動姿勢と学力が評価され、特待生として入学したらしい。
庶民がなぜここに?
――当時の俺は、本気でそう思っていた。
だが、彼女は大企業の子息令嬢たちの中にいても怖気づくことなく、いつも笑顔を絶やさなかった。



