財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

「園長先生が今週末に、自宅に招待したいって……」
「行く」
「え、そんな即決で? 予定とか確認しなくていいの?」

 当然とばかりに、園長宅訪問をOKしてくれた。

「お前の職場の上司だろ。挨拶するのは当然だ」
「……そう……かもしれないけど」
「それに、お前が好きな仕事に携わってる人なんだから、俺も知っておく必要がある」

 あの時の言葉が、ふいに胸の奥で蘇る。
 大事に思われていると勘違いしそうになるけど、完璧な夫婦を演じるために必要なだけ。
 私は深呼吸して、気持ちを切り替えた。
 園長夫妻に、偽者夫婦だと思われないようにしないとね!

「じゃあ、せ……惺也くん、今日はよろしくね」

 下の名前を呼ぶのは職場で慣れているはずなのに、旦那さんの名前を呼ぶのは、全然違う!
 何これ……物凄く恥ずかしいんだけど……。
 照れる私の頭を、彼は満足そうな笑みを浮かべながら、ポンと優しく撫でた。

 見悶える指先でインターフォンを鳴らすと、「はーい」と園長先生の声が聞こえてきて、門塀の施錠がガチャッと解除された。