財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 週末の土曜日、午後二時過ぎ。
 私は惺也くんと共に、園長宅を訪れた。

 インターフォンを押す前から、緊張で心臓が暴れている。
 隣に立つ彼はいつもと変わらず無表情で、前髪を手櫛で整えていた。

「片桐くん、今日は付き合ってもらってごめんね」

 声をかけながら、曲がっていたネクタイをそっと直してあげる。
 すると、片桐くんは私を見下ろし、小さく溜息を吐いた。

「あのなぁ……その〝片桐くん〟ってのをどうにかしろよ。お前も〝片桐〟になったんだし、夫婦で苗字呼びとか変に見られるだろ」
「あ……」
「何度も言うけど、下の名前にしろ。呼び捨てでも構わないから」
「あ……うん。……努力します」

 ネクタイを直し終わった私の手を掴み、真っすぐ射貫くような眼差しを向けられて、胸の奥がきゅっと熱くなる。

 ──そういえば、職場に結婚報告をした日の夜、園長先生宅に招待されたと話したら、快諾してくれたのよね。
 私はその時の彼の反応を思い出した。