財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

「もしかして少し前に、園の正門前で待ってた人?」
「最近、毎日送り迎えしてもらってるわよね? 物凄いスポーツカーで!」
「どんな人なの? 何してる人? どこで知り合ったの?」

 ……やっぱり、バレてる。

「高校時代の同級生で、少し前に再会して、それから付き合うようになったんですが……」

 契約結婚だなんて言えるわけがない。体裁のいい言葉を並べるしかできない。
 矢継ぎ早な質問にたじろいでいると、園長先生が助け舟を出してくれた。

「ほらほら、そろそろ園児たちが登園してくる頃よ。準備はできているのかしら?」
「あ、もうそんな時間!?」

 先生たちが慌てて席を立つ。
 私も職員室を出ようとした時、背後から声がかかった。

「李茉先生」
「……はい」

 園長先生が柔らかい笑みを浮かべて、手招きした。

「今週末のご予定は?」
「はい?」
「よかったら、ご主人と一緒に、うちに遊びにいらして? 李茉先生を口説き落とした男性がどんな方なのか、私も知りたいわ〜」
「く、……口説き落とすなんてとんでもないです。たまたま意気投合しただけで……」

 秘密にしていることを読み取られた気がして、心臓が早鐘を打つ。
 やっぱり人の上に立つ立場の人って、感性が鋭いのかも……。

「主人に都合を聞いてみます」
「ぜひ、そうしてちょうだい」

 園長先生は職員を家族のように大切にしてくれる人。
 だからこそ──契約結婚で仮面夫婦を演じることが、嘘をつくみたいで心苦しい。