財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 深夜一時になろうとしていて、片桐くんはベッドに潜り込むなり、自分の腕をポンポンと叩いた。

「……今日も?」
「愚問だ」

 当然とばかりに寝るスタンスを取る片桐くん。
 仕方なくベッドに横たわり、彼の腕に頭を預ける。

【寝室は同室、ベッドは同じものを使う】
 契約書に書かれていた〝ルール〟だから、必然的に隣で寝ることになる。
 でも、毎日こうして抱きしめられて寝ないといけないなんて……。

「動かれると眠れない」
「っ……!」

 片桐くんの長い腕が、ぎゅっと私を抱き寄せる。

「黙って抱きしめられてろ」

 少しでも寝やすい体勢を取ろうとすると、すぐに容赦のない言葉が耳元に落ちる。
 そして──嫌でも感じる、彼の体温。

 ほどよく鍛えられた胸元に身を預けるように抱きしめられ、身動き一つ取れない。
 理不尽だと思うのに、何故だろう。片桐くんに抱きしめられていると、次第に自然と睡魔が襲ってくる。

「……おやすみ」

 さっきの冷たい声音とは違い、驚くほど穏やかで、耳心地がいい。
 こんなに優しい人だったっけ……? 微睡む中で考えを巡らせる。
 ……違う。これは自然な夫婦を演じるために必要な〝練習〟だもの。

 優しく髪が撫でられ、呼吸のリズムもいつしか合っていき──私は毎晩、いつの間にか深い眠りへと誘われていく。