財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 数日後の夜。
 夜遅くに帰宅した片桐くんは、「シャワーを浴びてくる」とだけ言い、真っすぐ浴室へ向かった。
 その間に、私はドレッサーの上を確認する。今日も──贈り物が置かれている。
 結婚してからというもの、片桐くんは毎日、必ず何かしら手土産を持ち帰ってくる。
 花束の日もあれば、宝石の日もある。私が幼稚園の教諭で手荒れが酷いのを気にして、オーガニック専門店のハンドクリームを買ってきてくれた日もあった。

 初夜の日に泣いてしまったから、その〝ご機嫌取り〟なのかもしれない。
 それとも──誰かに向けて『円満な夫婦像』を見せるための演出なのか。

 紙袋を覗くと、高級ブランドのスキンケア一式が入っていた。

「……また、こんなに」

 どこに置いておけばいいのか、置き場所に悩んでいると、シャワーを終えた片桐くんが、濡れた髪をタオルで拭きながら現れた。
 思わず、スキンケアを施しているふりをしてしまった。だって、贈り物をもらって、嫌な顔なんてできないもの。
 鏡越しに片桐くんと視線が絡む。

「もう寝れるか?」
「夕食は?」
「今日は会食だったから、済ませてきた」
「……そう。今日もプレゼントをありがとう。でも、この間もらったものも、まだ使い終わってないのに」

 一応お礼を言うと、片桐くんの眉がぴくりと跳ねたのがわかった。

「全部試せ。合わないものは捨てろ」
「す、捨てろって……!」
「お前の肌に合うものだけ残せばいい」

 お金が有り余っている彼にとっては、毎日プレゼントすることも、どうってことないのかもしれない。
 でも──私にとって大事なのは、金額でも量でも回数でもなくて、〝気持ちがこもっているかどうか〟だ。
 道端の野花でも、私のために持ち帰ってくれたら、それだけで嬉しいのに。
 ……いや、期待する方が間違っているのかもしれない。