財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 片桐くんと共に自宅を後にし、エレベーターで地下駐車場へ降り立つ。
 そこには、白い高級スポーツカーが静かに佇んでいた。
 流線形のボディがライトに照らされて、まるで宝石みたいに輝いている。
 片桐くんは右側に立ち、ドアハンドルに指を翳した。
 すると、ドアが自動で持ち上がった。
 
「んっ……!?」

 こういう回転するドアって、何て言うんだっけ……。
 ええっと……、あ、そうそう! ガルウィング‼
 前に映画で観たことがある!

「何、ボケっとしてんだよ」
「へ……?」
「お前じゃドアを閉められないから、俺が閉めてやる」
「……え? ええっ!!」

 運転席のドアを開けたのだと思ったら、片桐くんが開けたのは──助手席のドアだった。
 確かに、乗るのはいいけど、どうやって閉めればいいのか全くわからない。
 ちょこんと助手席に乗り込むと、片桐くんは楽しそうにドアを閉めた。

 そして左側に回り込み、運転席へ乗り込む。
 初めて乗る左ハンドルの外国車。
 スポーツカーということもあって、見える景色がまるで違う。

 顔の前を黒いものがスッと横切ったと思ったら、彼の手が助手席のシートベルトを摑んでいた。

「あ、自分でします」
「いいから、じっとしてろ」
「っ……はい」

 その瞬間、ホワイトムスクの香りがふわっと鼻腔をくすぐった。
 いつもの高級セダンでも隣に座るのは緊張するのに、運転席と助手席という位置関係は、さらに心臓に悪い。

 それに──車外の世界が切り離されたような、独特の密室感がある。
 どこで誰が見ているかわからないというのに、片桐くんと二人きりの空間に、私は余計に緊張してしまう。

 高級スポーツカー特有の低く響くエンジン音を響かせながら、車は軽快に走り出した。