財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

「好きな数字を打て」
「え……?」
「思いついた数字をそのまま打てばいい」
「……ん?」

 意味がわからない。
 でも、彼の真剣な眼差しに押され、私は【60】と入力した。
 すると──。
【寄付完了:600,000 USD】画面に表示された文字を見て、息が止まった。

「ろ、ろっ、……六十万ドル……⁉ え、何ですか、これ……?」
「今、お前が打った数字──【60】は、米ドルで六十万ドルを意味していて、恵まれない子供たちにお前が寄付した。……俺のポケットマネーでな」
「なっ……!」

 思考が追いつかない。
 私の指先一つで、一億円近いお金が世界のどこかへ飛んでいった……?

「……私、とんでもないことしちゃった……」
「そうじゃない。お前は善行をした。俺の金を使ってな。金は使ってこそ価値がある」

 彼の声は淡々としているのに、その奥には確かな信念があるように思える。
 ただの贅沢じゃない。
 誰かのために使うことも〝正しい使い方〟なのだと、彼は言いたいのだろう。
 私の知らない世界の扉が、また一つ開かれた気がした。