財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 銀座の喧騒から離れた湾岸エリア。
 リムジンが滑らかに敷地へ入っていくと、そこには別世界が広がっていた。
 妖精が住んでいそうな森を抜けると、その奥に――まるで宇宙船のような巨大な建造物が佇んでいた。

 銀色の曲線フレームと黒いガラス張り。
 近未来的な外観はライトアップされていて、黄昏色から濃紺へと移り行く空を背景に、夢幻的な世界観をつくり出している。

「ここは……?」
「俺が集めたものを展示している」
「コレクション博物館……みたいな感じ?」
「……まあ、そんなところだ」

 楽しそうな笑みを浮かべる彼が、中へと案内してくれる。

 館内に足を踏み入れた瞬間──時間の流れがゆっくりと解けていくような、不思議な静けさがあった。
 照明は最低限で、展示物だけがスポットライトで浮かび上がっている。

 世界最古級の白磁、失われた文明の遺跡出土品、王侯貴族が愛した宝飾品。
 どれも、美術館やテレビの世界でしか見たことのないような骨董品ばかり。
 数億円はくだらないだろう名画の数々まであって、思わず息を呑んだ。
 さらには、どこかの国の先住民が愛用しているような農具や見たこともない布地で出来ている織物まである。

「……す、すごい……」
「価値が上がるから買っただけだ」

 抑揚のない声。
 でも、その横顔はどこか誇らしげで、少年のようにも見えた。

 片桐くんは、ただの拝金主義者じゃない。
〝価値〟を見抜く目を持っている人なんだ──そんな理解が、胸の奥に静かに芽生える。

 館内を一周した後、最後に案内されたのは、ひと際広いホールだった。