財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 ジュエリー店を後にした私たちは、高級フレグランス店、海外のハイブランドコスメ店、高級靴専門店など──次から次へと梯子し、どのお店でも片桐くんは豪快に買い占めていく。

「しゅっ、終了~‼ 買いすぎですよ……!」
「大したことないだろ」
「大したことありすぎますって……! もう、本当に……部屋に入りきらないです……‼」

 必死に訴えても、片桐くんは涼しい顔で言う。

「倉庫に入れておけばいいだろ」
「倉庫って……? いやいや、こんな高価なもの置いておいたら、泥棒に入られますから……!」
「フッ……なら、売ればいいだろ。借金の利息くらいにはなるかもな」
「なっ……!」

 私の抗議などどこ吹く風で、彼は次の店でも同じ調子だった。
 目についたものを片っ端から選び、秘書がそれを淡々と処理していく。

 昔は彼に『庶民』と言われてムッとしたけど、改めて思う。
 ……私、正真正銘の〝庶民〟だ。

 銀座の街を歩くたびに、私の世界がどんどん塗り替えられていくようで、胸の奥のざわめきが波紋のように広がっていった。

一時間半ほど経った頃、彼のスマホがピピッと鳴った。

「おっ、もうこんな時間か。そろそろ、お腹が空いただろ」
「……そうですね」
「うまい飯、食わせてやる」
「……あ、ありがとうございます」

 きっと夕食もすでに手配されているのだろうけど……なんだろう。彼がエスコートすると、キザさがないのが不思議。
 根っからの御曹司だから? 芝居じみたぎこちなさがないからなのか……。
 気づけば、すっかり彼のペースに呑まれていた。