財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 深いルビー色の液体が揺れるワイングラスを口元に運ぶと、芳醇な香りが鼻腔を掠めた。
 口に含むと、驚くほど滑らかで、果実の甘さと深みのある余韻が、緊張していた心を解きほぐしていく。
 
 メインの魚料理は皮がパリッと焼かれていて、ナイフを入れるとふわりと湯気が立ち上り、潮の香りが広がる。
 どれもこれも、庶民の私には縁のない世界の味で、食べるたびに胸が高鳴った。

「どうだ?」

 片桐くんはワイングラスを傾けながら、横目で私を見る。

「……すごく、美味しいです。それに、全てが夢のようで……」
「フッ、……まだ序の口だ」
「へ……?」

 片桐くんは不敵に微笑み、ワインを口にした。
 
 クルージングするだけでも贅沢なのに、私の好きな色のコーディネートとサイズがぴったりな靴とドレス。
 極めつけは、好物の魚介類が豊富なメニューで、超能力でも使えるのでは……? なんて思ってしまった。

 彼が用意してくれた非日常の世界に圧倒され、場違いだと思っていたのに、気づけば……私はその世界に魅了されていた。