財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 スイートルームを後にし、ホテルのエントランスに出ると、先ほどのリムジンが待機していた。
 片桐くんにエスコートされるまま乗り込むと、車は静かに発進した。

 三十分ほどで到着したのは、白く輝く大きなクルーザーが幾つも停泊しているマリーナ。
 そのうちのひと際大きな船体の側面には【KATAGIRI】と刻まれていて、他の船とは明らかに格が違う存在感。
 こ、これが……大財閥のクルーザーというものなのだろうか。

 タラップの上を歩くと、海風がふわりとドレスの裾を揺らし、太陽の陽射しが海面に反射してキラキラと輝く。
 まるで自分が映画のワンシーンに紛れ込んだみたいで、現実感が薄れていく。
 ピンヒールで歩くのがおぼつかず、足元が少し不安定になり、思わずよろけた体を片桐くんが抱き留めてくれた。

「気をつけろ」
「あ、……ありがとう」

 低く落ち着いた声音が耳元に落ちてきて、触れた部分がじんと熱を帯びる。
 
 船内に入ると、専属シェフらしき男性が恭しく頭を下げた。洗練されたお洒落な黒いコックコートを身に纏っている。
 用意されている席に着くと、彩り豊かな前菜のプレートが運ばれてきた。
 ガラス皿の上に並べられた食材が宝石みたいに輝いている。