財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

***(惺也視点)

 名古屋での仕事を終え、五日ぶりに都内に戻ってきた。
 新幹線を降りた瞬間、蒸し暑い空気が肌にまとわりつく。

 ふと視線を上げると、【SUMMER SALE】の大きな広告が目に入った。
 ──李茉に、何か買って帰るか。

 十日前の夜のことが、自然と胸に浮かんだ。
 弱音を零しながら泣いた彼女を抱きしめた感触。
 名前を呼んだ時の、俺を求めるような煽情的な眼差し。
 重ね合った素肌から伝わってきた彼女の体温。
 身も心も繋がった熱い一夜を思い返し、無意識に口元が緩む。

「社長、この後、どうされますか?」
「……少し寄る。先に帰っていいぞ」
「いえ、お供いたします」

 俺は及川を連れ、駅ビルの中へと向かった。

「そう言えば、俺の部屋のブラインドが新しくなったようだが、及川が指示したのか?」
「いえ。先月、社長と私が出張中に、清掃係から故障していると報告を受けたようで、すぐさま交換したようです。何か、ご不便でも?」
「いや、明るめな色に変わったからか、何となく、陽の入りが多くなった気がしただけだ」
「元の色に戻しますか?」

 及川がスマホをポケットから取り出した。今にも城ケ崎に指示を出しそうで、思わずスマホに手をかけた。

「いや、いい。手元がよく見えるようになったのだから、結果オーライだ」

 俺は大型商業施設のフロアを歩きながら、李茉が喜びそうなものを探す。
 けれど、どれもいまいち決め手に欠ける。

 花やアクセサリーは頻繁に贈っているし、服やバッグなどは、箱の中に入ったままのものも多い。
 無難に焼き菓子にでもしようかと考えていた、その時だった。

 視界の端に、見慣れた後ろ姿が映った。
 李茉……? 思わず足が止まる。

 すると、俺のすぐ後ろを歩いていた及川が、俺の背中にぶつかり、慌てて姿勢を正した。

 「しゃ、社長……?」