財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

「おっ、今日は空いてるっぽいな」
「いらっしゃいませ。お客様、何名様で」

 和食処【なごみ】の暖簾をくぐると、店員が笑顔で出迎えてくれて、元先生は店員に向けてピースのサインをした。

「二人です」
「二名様ですね。お席へご案内いたします」

 絣模様の作務衣姿の店員が、店内奥へと案内してくれる。
 衝立や暖簾などで個室のような感じに区画されていて、会食や飲み会などで大人気のお店だ。

 店内奥にある個室で、掘り炬燵式のテーブル席に案内され、元先生が〝本日のおすすめ御膳〟を二つ注文した。
 店員が静かに襖を閉め、個室を後にすると、元先生がおしぼりで手を拭きながら口を開く。

「たくさん歩いたから、疲れたでしょ」
「いえ、体力には自信がありますから」
「ふふ、頼もしいなぁ」

 毎日園児相手に園庭を駆けまわったりしているのだから、同世代のOLさんよりは体力がある。

「静琉の誕プレ選び、本当に助かったよ」
「いえいえ、お役に立てたのならよかったです」

 湯呑みに口をつけ、ほうじ茶を一口飲む。香ばしい香りが鼻腔を掠めた、その時。
 勢いよく襖が開き、黒いスーツ姿の男性が現れた。