財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 去年、静琉さんと一緒にランジェリーショップへ行った日のこと。
『子どもが生まれると、下着も機能性重視になっちゃうのよね。昔はもっと可愛いのを着てたんだけど』
 あの時の静琉さんの少し寂しそうな顔を、今もはっきりと憶えている。

「……元先生」
「ん?」
「子育てママさんだからこその、誕プレにしましょう!」
「え、……どういうこと?」

 私はエスカレーター横の案内板を指差した。
 そこには──大人気女優がモデルになっている話題のランジェリーブランドの広告が掲げられていた。
 元先生は一瞬ぽかんとした後、「……なるほど!」と目を輝かせた。

「そう言えば、最近、ああいうのを着てないかも」
「元先生からもらったら、絶対嬉しいと思います……!」
「けど……、なんか催促してるみたいじゃない?」
「ええ、いいじゃないですか、催促したって。だって、夫婦ですよ? 夫以外に誰に見せるんですか……!」

 恥ずかしがる元先生の顔を覗き込んで、恥ずかしいことじゃないんだと伝える。
 出産すると、女性は〝女〟であることより、〝母〟であることを求められることが多い。
 けれど、女性は何歳になっても〝女〟でありたいもの。
 それを認めるのも、求めるのも〝夫〟しかいない。他の男性ではダメなのだから。

 あの時の静琉さんは、口には出さなかったけれど、きっと心の奥に気持ちを沈めていたんだと思う。