財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 隣市の駅ビルは、買い物客で賑わっていた。
 エスカレーターで上ると、夏物のディスプレイが鮮やかに並び、どの店もサマーセールのポップが目に飛び込んでくる。

「静琉、こういう雰囲気のワンピース好きだったよな……」

 元先生がショーウィンドウを眺めながら呟く。

「でも、最近は動きやすい服が多いですよね。子供が小さいと、動きやすさや肌触り重視になりますし。これだと、ちょっと丈が長いかも……」
「確かに」

 毎日のように園児たちと過ごしているから、出産経験がなくても、私でもわかる。
 子どもは突飛な行動を起こすもの。だから、常に動きやすい格好が求められる。

 二人で服飾店をいくつか回ったものの、〝これだ〟というものは見つからなかった。

「去年ネックレスを贈ったしな……」
「静琉さんが欲しそうなもの……意外と思い浮かばないものですね……」
「……だろ?」

 ジュエリーショップの前を通り過ぎ、次々と候補が消えていく。

「うーん……どうしよう。李茉先生、何かいい案ない?」

 元先生が困ったように、溜息を零す。その時、ふと記憶が脳裏を掠めた。