財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

「あ、はい! もう終わりました」

 水のりを片づけ、元先生のもとに歩み寄る。
 
 温厚で優しい元先生は園児だけでなく、ママさんたちにも大人気で、私が新人の頃からずっと気にかけてくれている先輩教諭。
 元先生の奥様の(しず)()さんは私の元指導係で、出産を機に退職したけれど、プライベートでも食事をするような親しい間柄。
 ふたりは職場恋愛で結婚した――私の憧れの夫婦。

「元先生、どうしたんですか?」
「実は……静琉の誕プレを悩んでて……。ちょっと相談に乗ってもらいたくて」
「そういえば、再来週ですね!」
「うん。毎年悩むんだけど、今年は特に思いつかなくて。出し尽くしてる感もあるしさ」

 眉根を下げた元先生は、両手を合わせて「頼む‼」と拝み倒してきた。

「じゃあ、この後、見に行きます?」
「えっ、いいの? 旦那さんに怒られない……?」
「出張で不在なので、大丈夫ですよ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて、お願いしようかな」

 私は元先生と共に、職員室へ残りの業務をしに、教室を後にした。
 
 退勤後、私と元先生は、商業施設がたくさん入っている隣市の駅ビルで、静琉さんへの誕生日プレゼントを探すことになった。

「何か、見つかるといいですね」
「そうだね」

 仕事着のまま、元先生と肩を並べて、駅へと向かった。