財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 ホテルのスイートルームで甘い一夜を過ごしてから、十日ほどが経ったある日。
 受け持ちの年中クラスの園児たちが帰った教室は、夕方特有の静けさに包まれていた。

 ロッカーの上には、今日授業で制作した紙粘土の工作物が並んでいる。
 教室内の壁面に季節の掲示物を貼り終えた私は、ふと十日前の夜のことを思いだす。

 初めて、夫と過ごした甘い夜。思い出すだけで、顔が火照ってくる。

 けれど、彼は相変わらず多忙のようで……。
 あれから、夫婦らしい会話なんて皆無で、業務連絡みたいな簡素なメールのやり取りがあるくらい。

 元々、口数の多い人ではないし、共通の話題もないから、ついつい諦めてしまっているけれど……。
 本当はもっといっぱい会話をしたいし、顔を見ながら食事もしたいんだけどな……。

「愛華さんの家に、寝泊まりしてるのかな……」

 思わず弱音が口から漏れ出した、その時。

「李茉先生、壁面構成、そろそろ終わる?」

 年長クラスを担当している(おち)(かた)(はじめ)先生が、開いている後ろのドアからひょっこり顔を覗かせ、声をかけてきた。