財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 連れていかれたのは、最上階のスイートルーム。
 急だったのに、すぐさまスイートルームを押さえることができる惺也くんが、ますます別世界の人だとわかる。

 百五十平方メートルを超えるプレジデンシャルスイートルームは、まるで別世界だった。
 天井まで届く窓から夜景が広がり、静まり返った広いリビングは、外界と切り離されたような静かさ。

 惺也くんに促され、私はソファに腰を下ろした。隣に座った彼の視線が、まっすぐ私を捉える。

「……さっきの言葉、もう一度言ってみろ」
「え……?」

 逃げ場のない距離。酔いのせいで、頭がうまく回らない。

「……私、さっきなんて言った? ……会話にも入れなくて……ただ隣で微笑むことしかできなくて」
「いや、その前」
「へ?」

 突き詰めるような声音が室内に響く。

「……今日みたいなパーティー初めてだったから、うまく立ち回れなくて」
「もっと前」
「……ん?」

 惺也くんの瞳が、瞬きもせずに私を射抜く。

「私なんかが、……あなたの妻で……本当にいいのかな」
「〝なんか〟じゃないだろ」

 わずかに語気が強まり、肩がびくんと震えた。

「お前だから、……李茉だから、する気もなかった結婚をしたんだって」
「……そうなの?」
「当たり前だろ。メリットもない女を妻にするかよ」

 ……メリット。
 そうだよね、私は彼にとって、仕事の役に立つ駒にすぎない。
 そこに、〝好き〟とか、〝愛〟なんて感情は、最初からないってわかってるのに……。
 胸がきゅっと締めつけられて苦しいのに、熱い眼差しを向けられたら──私を選んでくれた理由が、ほんの少しだけ〝特別〟に思えてしまう。

「……李茉」

 名前を呼ばれただけで、心が疼いてしまう。こんなにも甘い声音と熱い眼差しで見つめられたら……。

「俺の隣は……お前以外ありえない」
「っ……」