財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 パーティーの参加者たちの会話は、世界の経済、企業買収の噂、寄付の金額云々……私には縁のない話ばかり。
 話題に入っていけず、ただ笑顔を作るだけで精一杯。
〝住む世界が違う〟という現実が、容赦なく突きつけられる。
 いてもいなくても変わらないんじゃないか──そんな思いが、胸の奥で膨らんでいく。

 もやもやする気持ちを隠すように、私はワイングラスを傾けた。
 二時間半ほど続いたパーティーが、ようやく終わりを迎える頃。

「そろそろ俺らも帰るか。……おい、大丈夫か?」

 惺也くんの声が聞こえた瞬間、ピンと張りつめていた糸がプツンと切れた気がした。
 急にふらついた私の体を支えるように、惺也くんが抱き留めてくれた。

「……少し酔ったみたい」
「すまない。気遣ってやれなくて」
「……ううん」

 私は小さく顔を振った。
 会場を後にし、エントランスで車が到着するのを待っていると、惺也くんがそっと私の肩にジャケットをかけてくれた。

 夜風が冷たいから──ただそれだけの理由かもしれない。
 けれど、その優しさが胸の奥にじんと染みて、酔いで緩んだ心が一気に揺らいだ。

「……惺也くん」